もの忘れ外来へようこそ
診察は予約制となります。
はじめに ~認知症予防は、介護予防~
「最近、もの忘れが増えた気がする」「家族の様子が少しおかしい」 そんな不安を感じたら、一人で悩まずに当クリニックの「もの忘れ外来」にご相談ください。 認知症は今や誰もがなり得る身近な疾患であり、要介護状態になる原因の上位を占めています。そのため、認知症の進行を防ぐことは、ご自身やご家族の「介護予防」に直結します。 患者様お一人おひとりの生活歴や個性、環境に合わせた「オーダーメイド型の治療・対応」を心がけております。
1. このような症状はありませんか?(早期発見チェックリスト)
認知症の症状は「もの忘れ」だけではありません。以下のような日常生活の変化に気づいたら、いますぐ専門医の診察を受けるサインです。
記憶のトラブル
- 同じ話を何度も繰り返すようになった。
- 同じものを何個も買ってきてしまう。
- 物の置き場所を頻繁に忘れる。
見当識(時間や場所の認識)のトラブル
- 長年住み慣れた自宅の近所で迷子になってしまった。
- 今日の日付や季節感がわからなくなった。
感情・意欲・性格の変化
- 以前より短気になり、なんだか怒りっぽくなった。
- 趣味や外出への関心が薄れ、一日中寝てばかりいる。
- 食欲が無くなってしまった、または異常に食べるようになった。
身体・感覚のトラブル
- 実際にはいない人や虫が見える(幻覚・幻視)。
- 歩幅が狭くなり、よく転倒するようになった。
言葉のトラブル
- 物の名前が出ず、「あれ」「それ」が多くなった。
- 言葉がスムーズに出てこない。
2. なぜ「早期発見・早期治療・早期対応」が重要なのか?(専門的解説)
多くの方が「認知症は治らない病気だから、病院に行っても仕方がない」と誤解されています。しかし、それは大きな間違いです。早期受診には以下の3つの大きなメリットがあります。
① 「治る認知症」や「改善する認知症」を見逃さないため
認知機能の低下を引き起こす疾患の中には、早期に適切な治療を行えば、劇的に症状が改善したり、治癒したりするものが含まれています。
- 正常圧水頭症:脳脊髄液が頭蓋内に溜まり脳を圧迫する病気。歩行障害や尿失禁を伴うことが多く、適切な処置で改善が期待できます。
- うつ病性仮性認知症:高齢者のうつ病は「意欲の低下」が前面に出るため、認知症のように見えることがあります。抗うつ薬による治療で回復します。
- 慢性硬膜下血腫:過去の軽い頭の打撲などが原因で、頭蓋骨の下に血が溜まる病気。外科的治療で速やかに回復します。
② 進行を遅らせるためのアプローチ
最も多い「アルツハイマー型認知症」であっても、早期に発見して抗認知症薬の服用や生活環境の調整を開始することで、病気の進行を緩やかにし、健康的な生活を長く維持することが可能です。 また、脳梗塞などが原因で起こる「脳血管性認知症」の場合は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をコントロールすることで、新たな脳血管障害を防ぎ、認知機能の低下を食い止めることができます。 リアルな幻視やパーキンソン症状(転倒しやすいなど)を伴う「レビー小体型認知症」では、薬剤に対して過敏に反応することがあるため、早期の正確な診断と慎重な薬の調整が不可欠です。
③ 今後の生活や介護の「備え」ができる
症状が軽度なうちに診断を受けることで、ご本人が自身の将来について意思表示をする余裕が生まれます。患者様やそのご家族も、焦ることなく財産管理、今後の生活環境の整備、介護サービスの計画などを余裕を持って立てることができます。
3. 診療のご案内
正確な診断とオーダーメイドの治療計画を立てるため、もの忘れ外来は予約制となっております。
対象となる方:初診の方は専門外来(もの忘れ外来)をご受診ください。
診察時間:お一人様 30分程度を予定しております。ご本人の生活歴や併存疾患などをじっくりお伺いするため、お時間をいただいております。
費用について:健康保険が適用される保険診療となります。(目安:1割負担の方で3,000円程度 ※行う検査の内容によって変動する場合があります)
ご家族のみのご相談について:「本人が受診を頑なに拒否している」など、ご本人の来院が困難でご家族のみが相談に来られる場合は、医療保険適用外となるため自費診療にて対応いたします。
4. ご予約から受診、診断までの流れ
認知症の診断は、一度の診察だけで確定できるものではありません。経過を慎重に見ていく必要があるため、医師の指示に基づく継続的な受診をお願いいたします。
【STEP 1】お電話でのご予約
まずは、ご本人の普段の生活状況をよく把握されているご家族様がお電話にてご予約をお取りください。
【STEP 2】初診・問診
医師がご本人・ご家族から丁寧にお話を伺います。「いつ頃から」「どのような症状が出始めたか」をメモしてお持ちいただくとスムーズです。
【STEP 3】各種検査の実施(必要に応じて)
正確な診断を下すため、以下の検査を必要に応じて組み合わせて行います。
- 採血:内科的疾患(甲状腺機能低下症やビタミン欠乏など)が原因でないかを確認します。
- 心理検査(認知機能テスト):記憶力、計算力、見当識などを客観的な数値で評価します。
- MRI検査等:脳萎縮の程度、脳梗塞や出血、腫瘍などがないかを視覚的に確認します。
【STEP 4】結果説明・再診
検査結果を踏まえ、現在の状態と今後の治療方針をご説明します。医師の指示のもと、定期的に再診へお越しください。
5. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 加齢による単なる「もの忘れ」と「認知症」はどう違うのですか?
A. 最もわかりやすい違いは「体験の全体を忘れるか、一部を忘れるか」です。例えば、「昨日の夕食のおかずを思い出せない」のは加齢によるもの忘れですが、「夕食を食べたこと自体を忘れてしまう」のは認知症の疑いがあります。また、加齢によるもの忘れはヒントを出せば思い出せますが、認知症の場合はヒントがあっても思い出すことができません。
Q2. 本人が「自分は病気ではない」「ボケていない」と受診を怒って拒否します。どう誘えばいいですか?
A. 「もの忘れ外来に行こう」「認知症の検査をしよう」という言葉は、ご本人のプライドを傷つけ、警戒心を強めてしまうことが多いです。「最近お疲れ気味だから、健康診断として行ってみよう」「お薬の見直しのために先生に会いに行こう」など、別の理由を提案してみてください。どうしても難しい場合は、まずはご家族様だけで「自費診療」として相談にお越しいただき、受診に向けた作戦を一緒に立てることも可能です。
Q3. 認知症の治療薬を飲むと、すぐに良くなるのでしょうか?副作用は?
A. アルツハイマー型認知症などの薬は、残念ながら「完全に元の状態に戻す(根治する)」ものではなく、「進行を遅らせる」ことを目的としています。人によっては一時的に頭がスッキリするような改善が見られることもあります。副作用としては、吐き気や食欲不振、不整脈などが出ることがあるため、ご本人の体調を見極めながら慎重に薬の種類と量を調整していきます。
Q4. 診察の際、家族は同席したほうが良いですか?
A. はい、可能な限り日頃のご様子をよく知るご家族様の同席をお願いしております。患者様ご自身は「何も困っていない」「全部自分でできている」とお答えになることが多く、ご家族様からの「実際の客観的な生活状況」の情報が、正確な診断において非常に重要な手がかりとなります。
Q5. 介護保険の申請や、今後の生活の相談にも乗ってもらえますか?
A. もちろんです。認知症治療は医療だけでは完結しません。必要に応じてケアマネージャーや地域の地域包括支援センターと連携し、介護保険の申請手続き、デイサービスや訪問診療や看護、介護の導入など、今後の生活を支えるための具体的なサポートをご提案いたします。
コラム
認知症は「予防・早期判定・進行抑制が目指せる病気」へと認識が大きく変わりつつあります。医学研究の進展により、全認知症リスクの約4割は生活習慣の改善によって予防・遅延が可能であることが明確になりました。
- 1. 約4割は予防可能
- 2. 聴覚・視覚のケア
- 3. 運動とコレステロール
- 4. 血液での早期診断
- 5. 原因物質除去の新薬
- 6. タウ狙う次世代薬
- 7. 睡眠と脳の清掃
- 8. 社会的孤立の防止
- 9. AI・デジタル活用
1. 約4割は予防可能:
国際医学誌 Lancet の報告等により、難聴や運動不足など「改善可能な14の要因」を抑えることで最大40%前後の発症を防げると判明しました。
2. 聴覚・視覚のケア:
日本人で最も認知症リスクへの寄与が大きいとされるのが「難聴」です。補聴器の活用や白内障の治療で五感からの入力を保つことが脳の防護になります。
3. 運動とコレステロール:
有酸素運動の実践と高LDLコレステロール(悪玉)の適切な管理は、脳の微小血管を守り神経細胞の変性を抑えます。
4. 血液での早期診断:
血液中の微量バイオマーカー(アミロイドβやタウ)を測定し、発症前の段階でリスクを検知する技術が実用化されています。
5. 原因物質除去の新薬:
脳内に蓄積する異常タンパク質「アミロイドβ」を除去し、進行を直接減速させる抗体薬が治療選択肢として浸透しています。
6. タウ狙う次世代薬:
アミロイドβに続いて蓄積し神経細胞を破壊する「タウタンパク質」を標的とした新薬開発が急速に進んでいます。
7. 睡眠と脳の清掃:
睡眠中に脳の老廃物を洗い流す仕組み(グリンパティックシステム)が解明され、質の高い睡眠の確保が重要視されています。
8. 社会的孤立の防止:
他者との会話や地域社会との関わりは脳の認知予備能を高めます。孤立を防ぐことが強力な予防策です。
9. AI・デジタル活用:
音声や歩行パターンのAI解析による早期検知や、認知機能を鍛えるアプリ等、テクノロジーを用いたアプローチが普及しています。
「早期に気づき、生活習慣を整え、必要に応じて医療につなぐ」という前向きなアプローチが、これからの認知症対策の鍵となります。
さいごに~これからの認知症ケア:私たちが大切にしたい「予防」と「共生」~
認知症とともに歩む社会に向けて、私たちは「予防」と「共生」の考え方を新しく捉え直し、誰もが安心して暮らせる地域づくりを目指しています。
新しい「予防」の視点
- 「備える」ための予防へ:単に病気を防ぐことだけが予防ではありません。「もし認知症になっても自分らしく暮らすための準備」も含めて、広い意味での予防として捉えていきます。
- 関心を持ち、地域とつながるきっかけに:「なるべく認知症になりたくない」という素直な気持ちを大切にし、健康への関心を高めたり、医療や地域とつながったりする第一歩にします。
- かかりつけ医による長期的な寄り添い:2024年に施行された「認知症基本法」でも、予防と共生は車の両輪とされています。かかりつけ医が長期間にわたって伴走し、一人ひとりの暮らしをサポートします。
地域で支え合う「共生」の視点
- 現実を受け止め、みんなで暮らす:完全な発症予防が難しい現状だからこそ、認知症があってもなくても、住み慣れた地域で安心して共に生きていく選択が不可欠です。
- 未来の医療への期待:日々の暮らしを「共生」の視点で支えながら、これからの医学・医療の進歩による新しい予防法や治療法の開発にも期待を寄せていきます。
予防を「健康な暮らしと備えの第一歩」として活かしつつ、日々の現場では「共生」を土台に置く。このしなやかで現実的なバランスを大切にしながら、医療と地域社会が手を携えて皆様の毎日を支えていきます。



